チェスは考えるスポーツ

チェスは世界で最も普及している盤上競技(囲碁将棋のように盤と駒/石を使い二人で争うゲーム)で、完全に全世界共通のルールを持ち、年齢や性別に関係なく、また国籍の違いを超えて言葉が通じなくとも、親しく手談を交わす(対局することによって楽しみを通じる)事のできる優れた社交の道具です。チェスの発祥は古代インドにさかのぼります。7世紀頃ペルシャに入り、その後アラビア文化として、他技術、知識(例えば算用数字など)とともにヨーロッパに伝わった。当時の文献を見ても10世紀頃のアラブ世界でのチェスのレベルは現在の比してもかなり高かった。

 当時のチェスはシャトランジュといい、今と違う駒の動きをしたものでこれはヨーロッパの中世まで続いた(中世のチェス)。

 現在のチェスに変革されたのは15世紀のスペインであった。神聖ローマ帝国によるヨーロッパ支配により、宮廷のゲームとしてこの新しいルールがほぼヨーロッパ全土に普及した。チェスが世界に広まったのは、大航海時代以降、イギリス・オランダ等の通商国家が世界各地を植民地化した副産物である。

 我が国でチェスを「西洋将棋」とも言うのはそのイメージが強いからであるが、チェスの発祥は東洋であるし、競技人口の盛んから言っても東洋は引けを取らない。

 特に女子はオリンピックでも優勝したり、世界女子チャンピオンを獲得したり、中国の最近の活躍はめざましい。中国では、元々「象棋」(中国将棋)が盛んであったが、現在は逆転し、若い人の間では囲碁、チェス(国際象棋)、象棋の順になっている。

 我が国では普及が遅れ、競技人口も少なく、そのレベルも高くないが最近ようやく愛好者も増え、国際的な競技として、これからは非常に楽しみのある頭のスポーツである。



        2年に一度のチェスオリンピック

 チェスのルールと制度は世界共通世界統一組織としてチェス連盟FIDEが有り、IOC及びUNESCOからスポーツ国際組織としての承認を受けている。FIDEはオリンピックスポーツ各種団体の集まるスイス・ローザンヌ市に本部を置き、加盟国の数の多さではFIFAサッカーにならんで他のスポーツに大差をつけている。

 日本はFIDEにJCA日本チェス協会が1968年に加盟し毎年各種の日本選手権を開き、成績優秀者をチェスオリンピックなどの国際大会に選手として派遣するなど、活動を続けている。

 FIDEが2年に一度開くチェスオリンピック壮観である。世界120カ国以上から各国のトップ男女10名の選手1000人以上が一つの都市に集まって、約3週間に渡たり熱戦を繰り広げる。

 集まる選手の数と期間の長さから言ってこれだけの規模の国際的なスポーツ大会は他には見られないだろう。チェス界の合言葉、GENS UNA SUMUS(ラテン語で「人間・皆一家族」)が実現する。

 FIDEは各種の世界選手権を開催する。特に個人世界選手権はその賞金額からも注目される。賞金の最高額は非公式ながら、1992年にユーゴスラビアが主催したアメリカのかつての世界チャンピオン、ボビー・フィッシャーとそのライバル、ロシアのボリス・スパスキイの間で行われたマッチで600万ドル(!!)。これを勝者敗者が5対3で分けた。

 FIDEはこのほかにレイティングといって世界共通の棋力によるランキングを年2回発表する。プロ棋士アマ棋士が織まざるそのリストには国際棋士約3万人が搭載され、うち日本から20数人が搭載されている

 国内ではJCA(日本チェス協会)が公式戦を各地のクラブで開催し、参加した全てのレイティングが年6回発表される。公式戦への参加は初心者から日本チャンピオンまで全てのレベルの人が平等である。
→レイティングに関してはこちら

 チェスは友人家族の中で気軽に楽しむもよし、JCAに入会して公式戦に参加し上達を狙うのも楽しい、奥行きのとても深いゲームである。

 国際タイトルのグランドマスター2600、国際マスター2450等はちょっと目標が高すぎると思えば、国内には段位の制度があるし、2年くらい頑張れば初段1500は難しくない。

 チェスの上達は実践研究書籍の他に最近はパソコンの優れたプログラムがあり、日本チャンピオンより強いものがある。

 こっそり強くなってみないか。オリンピック選手になるのは誰にとっても夢ではない。世界各地で今日も開かれているオープン大会には誰でも参加できる。

 →日本各地にあるクラブの連絡先は、こちら



     チェスと将棋

 チェスとは非常に似た競技として、日本には将棋があります。どちらも相手の王様をつめることが目的で駒の種類も良く似ています。
 多分、発生は同じでしょう。チェスと将棋は、相撲とレスリングの様な関係です。お互いに似たゲームであっても発展した文化的背景が異なりますし、細かいルールや習慣は全く異なります。組織、システムも違いますし、ゲームの考え方も大分違います。一口にいうと、チェスの方が戦略的で、将棋の方が戦術的という人もいます。いずれも大変奥の深い競技ですが、全く別個のものと考えてください。



        チェスと持ち時間

 チェスは考える遊びである。
考え出したらきりがなく、特に初心の内は考えるより決断に迷ってむだな長考をすることが多い。友人家族のゲームはともかく、競技会ではお互いの考慮時間が対局時計で制限される。

 競技会での持ち時間はアマプロ同じで、国際選手権や大きなオープン大会では一人一局標準3時間、小さいオープンで2時間が普通である。日本ではゴールデンウィークの7日間に渡って13回戦が行われる全国大会が2時間、その他のオープンは80分くらいが標準である。他に正式種目として「快速チェス」30分、「電撃チェスブリッツ」5分がある。このブリッツは持ち時間5分がきれたら負けで忙しいが始めると病みつきになり、競技会などでは明日の本戦も忘れて徹夜で熱くなり、何十局も勝負を繰り返すツワモノを見ないことはない。この時計の習慣は囲碁将棋をなさる方にも是非すすめる。
昔、「何とかのないコーヒーなんて」というCMがあったが「時計のないチェスなんて」という言葉はぴったりである。


    旅行するときチェスは楽しい

海外の新聞雑誌や機関紙にはチェスコラムがあって、特に専門的な技術や知識がなくても楽しめる「プロブレム」(チェスパズル)が出題されていることがある。「プロブレム」の解答は実戦が盲点にはいる非常識の連続が正解として仕組まれている芸術の世界だ。

 世界各地のチェスをトピックとする記念切手が発行されている。コレクターが世界各国におり文通で情報を交換している人も多い。最近はインターネットで世界中の見知らぬ人と対戦するシステムがあり常時相手が待機していて、チャットを楽しむことができる。