国際チェス連盟(FIDE)憲章  ≪人間一つ家族≫


FIDEの志気の強靭さは会員(加盟協会)の規律によって維持されている。―憲章前言

世界中のチェス競技愛好者及び競技会組織者の規範であるFIDE憲章が改定されました。FIDEはIOC(国際オリンピック委員会)によって、スポーツであるチェスの全世界的な統括組織として、また責任組織として、他のメインスポーツ統括団体と並んで承認されました。今回の改定ではIOCの指導に従い文章を整理し、第15章(倫理コード)が憲章に加えられました。
FIDEには世界中の現役チェスプレーヤーが全て各国協会を通じて、加盟しています。この憲章は世界中のチェス関係者にとっての憲法であり、まじめにチェス競技に係わる人の合意事項です。今回は会員にとって必要である第1章及び第2章及び第15章(倫理コード)を掲載します。
世界中のチェス競技者が従う共通の規範のチェスを行うために各国協会の会員はこの憲章を認証しています。憲章の承認はJCAの会員となるための条件であるだけでなく、チェス活動をする全ての人の前提条件です。日本は例外ではありません。





『2000 FIDE Handbook』
Statutes of FIDE より抜粋(日本語訳正典)。



第1章 FIDEの地位、原則、および目的

1. 国際チェス連盟(International Chess Federation,またはFederation Internationale des Echecs,以下FIDEと言う)は、チェス界が認める国際組織として、1924年7月20日、パリで創立された。FIDEは、チェス競技およびその選手権について責任を担う世界で最高の組織として国際オリンピック委員会(International Olympic Committee)により承認されている。

FIDEは、世界中の各国チェス協会を統合し、すべての国際競技を統括監視する。


2. FIDEはチェス活動のみに関与する。

FIDEは民主的に設立され、メンバー(加盟各国協会)の権利は平等である。


FIDEは、国際的、政治的、民族的、社会的あるいは宗教上の理由、あるいは性別によって、差別を設けない。

FIDEは各国チェス協会(National Federation以下加盟協会という。日本はJCA)の国内問題に関して、厳密に中立を維持する。
a. FIDEの全てのイベント(競技、会議、会合)は、すべての加盟協会の代表者に対して自由な参加を保証する国においてのみ主催される。
b. 国家間に戦争状態、あるいは激しい暴力行為のある場合、多数決のみにより、総会は例外を定めることができる。


3.

チェスは、もっとも古くから存在する、知的で、文化的なゲームの一つである。チェスは、スポーツ、科学的思考、および芸術要素の組み合わされたものである。

FIDEの目的および目標は、したがって世界中すべての国々における上記に定義されたチェスの普及および発展であり、同様に、チェスのスポーツ、科学、創造を根拠とするチェスの文化、知識の水準を向上させることにある。FIDEは、チェス活動のすべての分野における、チェスに打ち込む人たちの緊密な国際協力を支援する。またそれにより、世界中すべての人々の間で、友好的な協調関係を増進することを目的とする。


4. FIDEはチェスのルール、世界選手権および他のすべてのFIDEのチェス競技の機構に関する規定を制定する。FIDEは、国際チェス・タイトルを授与する。チェスのルールを制定し、すべてのFIDE競技のための規則と国際諸チェス・タイトル授与のための条件を決定するのはFIDE総会である。

FIDE競技は、男女いずれの性の選手に対しても、開放されている。ただし“女子”と明記された競技は、女子選手のみが参加できる。女子選手は、「男子」と称される競技にも参加できる。


5. FIDEにおける行政事務を容易にするため、可能な限り地域的視点により、ゾーンが作成される。各国協会は、いずれかのゾーンに割り当てられる。ゾーンの数は制限されていないが、ゾーンはチェスの、あるいは行政上の理由で必要とされる場合のみ作成される。

(1980年決議;ゾーン区分の変更が必要な際は以下の基準が使用される。)

a. 地理的理由 e. レイティングのあるプレイヤーの数
b. 加盟協会の数 f. タイトルを所有するプレイヤーの数
c. 構成組織の強さ g. 加盟協会間の競技の促進
d. (ゾーン内)チェスプレイヤー総数 h. 特別に考慮される理由。

第2章 FIDE会員、その権利と義務

1. FIDE憲章を承認し、憲章に反する活動を展開しないことを条件に、FIDEはそれぞれの国でチェス活動に最高の権威を有し、FIDE加盟を許可されたチェス協会を会員とする。一国一協会のみがFIDEに加盟できる。FIDEは第2.8条に従い、加盟協会としての地位を仮に与えることができる。加盟出願協会は正式、あるいは仮加盟権を与えられるためには、以下の条件のいずれかを満たしていなければならない。
a. 協会の、正式、あるいは仮加盟が、既に認められている場合。
b. 出願協会が、国際オリンピック委員会の会員である国(地域)に属する場合。
c. 出願協会が国際連合において会員資格あるいはオブザーバーとしての地位を有する国(地域)に属する場合。
(総会、97年)


2. 各国チェス協会加盟の承認は、会長に提出された出願申請を通して行われる。仮加盟は理事会、理事会/会長任命による委員会によって決定される。最終決定は、理事会による前提条件の検査後に、総会により判定される。

加盟申請書には、申請者の会則と目的及びこれまでの活動がFIDE憲章と一致することを示す、すべてのデータを含んでいなければならない。

加盟申請は、総会によって定められたFIDEの公式調査を受け、公式調査項目が完全に満たされていて、その協会会則のコピーを伴い、国の法律により必要な場合は国の管轄機関の承認あるいは認証を受けたものでなければならない。


3. 加盟協会(以下会員という)は、総会において一議席及び一票を持つ;会員は投票権を行使する資格;FIDEに提案書を提出する権利;規則に従い、すべてのFIDEイベントに参加する資格;を持つ。また会員は、監査委員会(Verificatio Commission)を通して、FIDEの財務管理を詳細に検査することができる。


4. 会員は、FIDEの規則、調整、決議および裁決を、遵守し、承認しなくてはならない。会員はまた、指定された日時までに総会によって決められた会費、および他のFIDE分担金を支払わなければならない。さらに会員は、そのチェス活動の中で、FIDEの活動を支援しなければならない。

各会員は、以下の情報を含んだ報告書を、毎年遅くとも4月1日までにFIDE事務局へ提出する。

a. 協会の名称および住所
b. 会長の氏名および住所
c. 事務局の名称および住所
d. 協会とFIDEの間の仲に立つ委員(The Permanent Delegate)の氏名と住所
e. その国のチャンピオンの氏名
f. もしあるならば、公式会報の名称および住所
g. 1月1日、会計年度の終わりに、その協会に直接および間接に所属するプレイヤー数
h. 事前の報告のある、国際チェス・イベント、あるいは将来に計画されている国際チェス・イベントの日付、場所、その他の詳細。
年変更の間に上述のa〜dおよび項で言及したデータに変化が生じる場合には、その協会は直ちに事務局へ通知しなくてはならない。
項で言及されたデータを会員が提供しないときは、そのゾーンの会長との協議後、会員の数を会長が決定する。会員によって提出されたデータが明らかな誤りを含んでいると思われるとき、同じ手続きが取られる。


5.

憲章2.4条で言及した義務を果たさない会員は、一時的にあるいは明確に、FIDEから除籍されることがある。

FIDEに対しての財政面での義務を期限までに果たさない会員は、会長によって一時的に除籍されることがある。一時的に除籍された会員が、総会の90日前に財政的義務を完済した場合、一時的除名は取り消される。除名期間中は、(その協会に国籍をおく全ての競技者は)いかなるFIDEイベントあるいはミーティングへの参加も許可されない。総会の90日前を過ぎて総会前に支払いがなされても、総会の多数決による承認がなければ参加は許可されない。

上記の問題は次の総会に提出され、怠った協会を明確に除名するかどうかを決定する。

他の理由では、総会はその会員に憲章/規則/裁定/あるいは決定に対して著しい違反がある場合のみ、明確な除名を決定できる。ここで言及したケースでは、会長任命による委員会(Presidential Board)は、違反行為(あるいはFIDEの原則に反した行動)を調査し検討するために、3人の委員からなる委員会を選ぶことができる;その委員会は、総会、または、あるいはオリンピックの開催されない年の理事会に対して、調査結果を報告しなければならない。


6. 会員は、FIDEから脱退する権利を有する。この場合遅くとも3ヶ月前までに、会長に対して、脱退を書面で通知しなくてはならない。会費、および他の分担金は、すべて脱退が有効になる日までは支払う義務がある。


7. 会員の除籍あるいは退会に際して、会費および他の分担金が払い戻されることはない。


8. 仮会員は、総会で投票する権利を持たないこと、またその代表(事務局)はFIDE役員に立候補できないことを除いて、正会員の権利および義務をすべて持つ。退会および除籍に関する規則は、正会員に準ずる。仮会員が5年以内に正会員としての資格を達成していない場合、総会はその仮資格を5年の間延長できる。総会においてこの延長手続きの認められない場合、仮資格は自動的に消失する。


9.

準会員資格(総会、93年)

憲章2.2条の手続きに従い、国連での会員権あるいはオブザーバーとしての資格を有していない国、あるいは地域に対して準会員としての地位が与えられる場合がある。

a. 準会員資格の申請者の属する地域はFIDE加盟協会の一部でなければならず、その申請にはその協会会員の同意を必要とする。準会員は、FIDE会議での投票権を持たない。
b. 準会員資格の申請者とその親元の協会は共通の境界を有せず、大陸を異にしなければならない。さらに、準会員資格申請者の完全な独立について、両者合意の分離手続きが進行中でなければならばい。
c. 準会員は、オリンピック大会および他のチーム競技会、あるいは個人競技会に参加できる。
d. 競技会参加費は、その準会員によって支払われる。他のFIDE会費は、その親元の協会とその準会員との間で協議して決める。


10. 関連国際チェス組織とは、以下のものを指す。
a. FIDEとの契約によって合法的関係が確立されている組織。
b.

大陸などの地域その他、FIDE加盟国で構成される協会グループの利益を代表する組織。

条項に定義される国際チェス協会の加入は、総会による承認を必要とする。


11. 個人会員として以下を定める。
a. 名誉会員あるいは名誉FIDE会長とは、世界規模のチェスに対する特別な功績により、指名された個人をいう。
b. 終身会員およびFIDE後援会員とは、FIDEに対して財政的貢献を行い、総会によって確定された、個人をいう。

特別顕彰とは、重要国際チェスイベントの繰り返し開催国、長年にわたるFIDEの業務における組織的な仕事、あるいは、他の国際チェス運動のための活動の顕著な成功に対して与えられる。

FIDE前会長のみが、名誉会長に指名され得る。1人の名誉会長が、会長任命による委員会(Presidential Board)においていつでも活動することができる。新しい名誉会長が総会で指名されたときには、その前の名誉会長はその称号を保持し続けるが、会長任命による委員会(Presidential Board)では活動しえない。ただし、現在名誉会長としての称号を有するもので、名誉会長として活動し続け、会長任命による委員会の委員として投票する権利を保持し、職務に関連する経費の請求を放棄する意志がある場合は、この規則の適用から除外する。(総会、98年)


第15章 倫理コード

1. チェスの競技および概念は、関係する全員が既存のルールおよび規則を遵守し、フェアプレーおよび正しいスポーツマン精神に従う、という前提に基づいている。


2. FIDEの競技会およびイベントに参加するすべての関係者に期待する行為の標準のあり方を明細に、正確にすべての状況について定義することは不可能である。また倫理コード(規約)違反により、懲戒処分に結びつく行為のすべてをリストアップすることは、不可能である。一般的な常識によって競技者に求められる行動の標準はほとんどの場合理解できるだろう。もしFIDEイベントの参加者が、ここで期待される行為にとはどうすることかについて判らない場合は、現役のFIDE役員またはイベントの責任者である地域の主催者に問うべきである。


3. 競技中あるいは競技会中に発生した紛争は、その時存在している競技ルール、およびその競技会の規則により、解決される。


4. この倫理コードは、以下について適用される。
a. FIDE会員
b.

加盟協会

c.

代表者および顧問

d.

加盟関連組織

e. 主催者、スポンサー(後援者)
f. FIDE登録競技会の全競技者
この倫理コードは故意または重なる過失により競技のルールと規則を破る者(個人あるいは組織)に対して、またはフェアプレーの精神を欠く者(同上)に対して、取られる懲戒を管理する。


5. 倫理違反
以下は個人あるいは組織が直接または間接にかかわる場合、この倫理コード違反である。

1. 競技の結果に、またはFIDE役員選挙の結果に影響を与える目的で、報酬あるいは賄賂を提示し、または提示を試みること。また、受け取ること。

2. 他の場合について、本コードに反する行動をとること。

3. (倫理違反の具体例として)以下のようなものが挙げる
a. FIDEおよび各国協会事務局の、管理上の不正行為。利得を得る目的で正しくない情報を与える場合も、不正である。
b. 必要な信頼を失う行為、他の点から信頼に値しなくなった役員。
c. 公平で責任のある(指揮権のある)機能を果たさない主催者、競技会管理者、アービター(審判)、およびその他の職員。
d. 常識的な礼儀およびチェスの作法を欠くこと。個人的資質に由来する無作法なことは一般的にここに当てはまる。
e. 競技中あるいは競技会中の、不正行為あるいは不正の試み。チェス・イベント中あるいはチェス・イベントに関連した、暴力、威嚇、その他不適切な言動。
f. 正当な理由のない、またはあってもアービターへの通知なしの、選手の退出。
g. チェス規約(FIDE Laws of Chess)他、承認済競技会規則への重大、または反覆違反。
h. トップ・レベル(2550〜)の競技会では、選手、代表団チームは、高水準のドレス・コード(服装規約)に応じなければならない。代表団には、選手のセコンド、マネージャーの両方が含まれる。選手は、自分の代表団の登録メンバーの行動について責任を負う。
i. 選手および代表団メンバーは、他の選手、役員、スポンサー(後援者)に対して、不当な非難を行ってはならない。抗議はすべて、アービターあるいは競技会の技術監督(技術的問題の管理者)に提出しなければならない。
j. チェスの競技について、あるいはFIDEまたは協会を不条理で不利に、評判を損なう行為に対しては、この倫理コードにしたがった懲戒が講じられる。
k. FIDE、イベント、主催者、参加者、スポンサーの評判を傷つける。あるいは評判を落とすことも同じ。


6. 倫理違反
競技会管理者は、競技と競技会の両方の適切な運営を保証するため、Laws of Chessおよび競技会規則にしたがい、すべての必要な処置を取る。
a. このコードに反する行動をとった加盟協会、役員、および関連する組織は、会員または事務局を一時的に除籍される場合がある。
b. このコードに反する行動をとった者はだれでも、すべてのFIDE競技会への参加から、あるいは特定のタイプの競技会から、3年間を上限として除外される場合があり得る。除外期間の長さは、違反行為の種類およびそれ以前に行われた違反行為を、考慮に入れる。
c. 倫理コードにしたがって行動しない競技会・アービターは、アービター認可の喪失、あるいは3年を上限としてFIDE競技会を監督する権利を取り消されることがある。アービター資格を失った場合、新しい認可手続きは通常の規則にしたがって始めから行う。
d. このコードに違反して行動する競技会主催者は、3年を上限としてFIDEイベントを主催する権利を停止させられる場合がある。
e. 選手および代表団メンバーが、正当な理由なくルール、運営、条件に関して妨害あるいは騒動起こした場合には、その競技会のアピール委員会(Appeal Committee)の指示で、妨害の程度により、選手は5,000米ドル以下の罰金を科される場合があり、また1つ以上のゲームを没収される場合がある。
f. 代表団選手およびメンバーが、イベントに参加している他の選手および代表団員に対して、物理的にあるいは言葉の上で、攻撃的なもしくは脅迫的な言動をした場合には、以下に挙げる懲罰のうちのいくつかあるいはすべてを、FIDEが執行することがある。
@. 選手に25,000米ドル以下の罰金を科す。
A. 選手から1局または競技会を没収する。
B. その攻撃的な言動が、選手代表団内メンバーによって起こされた場合、その人物にはそのイベントから退去するように要求し、応じることを拒否したならば、該当選手が上述の罰金(penalties)を科せられる。


7. 行政手続き

1. 協会あるいはFIDE職員によるこのコードの規則に対する違反は、FIDE事務局(FIDE Secretariat)へ報告するものとする。

2. このコードの違反は、FIDE倫理委員会に報告され、その裁定を受ける。

3. 問題とする経過は、書類にされていなければならない。裁定は根拠のあるものに対してのみ、被告が十分な根拠を文書提出後、または必要なら口頭で説明し、自ら弁護する機会を与えられた記録を提出した後行われる。

4. FIDE役員によってなされた決定に対する抗議は、FIDE倫理委員会へ提出することができる。その抗議は、250米ドルの供託金とともに、書留郵便で送らなければいけない。この供託金は、抗議意図および目的正当であるということが証明されればあとで返金される。

5. 本倫理委員会によってなされた決定は、ローザンヌ(スイス)のスポーツ仲裁裁判所(the Court of Arbitration for Sport)に対し、スポーツ関連仲裁規定にしたがった抗議仲裁手続きを経て提訴できる。

6. 上記の訴えの期限は、倫理委員会の決定の通知から21日間とする。通常の裁判所への告訴権は、排除されている。